2024.09.11 COLUMN
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アミノ酸の「L」「D」「DL」って何!?を詳しく解説

アミノ酸は、体を作るために必要な「材料」のようなものです。
特に、たんぱく質という栄養素の元になっています。
たんぱく質は、筋肉や肌、髪の毛など、体のさまざまな部分を作る大切な成分であり、アミノ酸はその小さなパーツです。

たとえば、レゴブロックでいろんな形を作るとき、1つ1つのブロックがアミノ酸にあたります。
それらを組み合わせて大きなもの(=たんぱく質)を作る感じです。
アミノ酸は全部で20種類あり、そのうち9種類は体内で作れないので、食べ物から摂らなければなりません。
これを必須アミノ酸と言います。
残りのアミノ酸は体内で作れるため、非必須アミノ酸と呼ばれます。

アミノ酸

アミノ酸は小さな分子であり、いくつかの基本的な「部品」からできています。
どのアミノ酸も次の3つの部分を持っています。
アミノ基(-NH₂): 窒素と水素からなる部分。
カルボキシル基(-COOH): 炭素、酸素、そして水素からなる部分。
側鎖(Rグループ): 各アミノ酸ごとに違う部分。この部分によって、アミノ酸の性質が変わる。
この3つのパーツがつながることで、アミノ酸の基本的な形ができています。

    アミノ酸の中には「L型」と「D型」という2つの形があり、「L型」は私たちの体の中で使われる形です。
    ほとんどの自然界の生物も、L型のアミノ酸を使っています。

    一方、D型はL型と鏡に映ったように反対の形をしていますが、性質が少し異なります。
    自然界では、細菌や一部の特殊な生物がD型のアミノ酸を使うことがありますが、私たちの体は基本的にL型を好んで使うため、D型のアミノ酸は体内であまり役に立ちません。

    つまり、L型は「体に役立つ形」、D型は「特定の微生物などが使う形」と覚えるとわかりやすいですね!
    これら2つの型は、分子の空間的な配置(立体構造)がどのようになっているかによって決まります。

    鏡像異性体(エナンチオマー)

    アミノ酸の中で、アミノ基やカルボキシル基などが並んでいる位置が左右対称でない場合があります。
    これを「鏡像異性体」や「光学異性体」と呼びます。
    つまり、1つのアミノ酸が鏡に映ったような2つの形を持つことができるのです。

    L型アミノ酸:自然界で私たちの体が主に使う形。
    D型アミノ酸:鏡に映したような反対の形ですが、体内ではあまり使われません。

    たとえるなら…

    L型とD型の違いは、左手と右手の関係に似ています。
    どちらも同じ「手」ですが、左手の手袋は右手には合いませんよね。
    それと同じように、L型アミノ酸は体の中でぴったり合う形なので役立ちますが、D型は合わないためあまり使われないのです。

    どうしてL型が重要なの?

    私たちの体がL型を主に使う理由は、進化の過程でそうなったと言われていますが、はっきりした理由はまだ分かっていません。
    それでも、L型が体にとって一番「働きやすい」形であることは確かです。
    このように、アミノ酸の形は単なる化学記号だけでなく、実際に体内でどう働くかを左右する重要なポイントです。

    分子の立体構造とは?

    分子の空間的な配置は、アミノ酸に限らず分子全般において非常に重要です。
    これは、分子の中で原子がどのように並んでいるか、つまり「3次元空間の中でどんな形をしているか」を示すものです。

    分子を単純に描くと、化学式のように2次元の図形として表現されることが多く、たとえば、水(H₂O)なら、酸素原子(O)の左右に水素原子(H)が1つずつついているように見えます。
    でも、実際の分子は3次元の立体的な形を持っています。
    空間の中でどのように原子が配置されているかが大切なのです。

    アミノ酸の立体構造

    アミノ酸の立体構造では、次のような配置がポイントになります。
    カルボキシル基(-COOH): 一方に配置されていて、酸の性質を持つ部分。
    アミノ基(-NH₂):反対側に配置されていて、塩基の性質を持つ部分。
    水素原子(-H):これも特定の方向に位置している。
    側鎖(Rグループ):各アミノ酸によって違うけれど、ここも特定の位置に配置されている。
    この4つの部分が、1つの中心となる炭素原子(α炭素)に結びついています。

    キラリティ(Chirality)

    アミノ酸の立体構造を理解するために知っておきたい概念がキラリティというもの。
    キラリティとは、左右対称ではない形のことを指します。
    これをもっと簡単に言うと、先ほどの「左右の手」の話が良い例になります。

    例えば、L型アミノ酸とD型アミノ酸は、同じ分子の構成要素を持っているけれど、その配置が鏡に映ったように異なります。
    だから、それぞれが違う「立体構造」を持っていて、L型とD型は同じではないということになります。

    立体構造が働き方に影響する理由

    立体構造は、分子が他の分子とどのように相互作用するかに大きな影響を与えます。
    分子は他の分子と鍵と鍵穴のようにピッタリ合わないと、正しく働けないことが多くなります。

    たとえば、酵素がアミノ酸と結びついて反応を促進するとき、酵素はL型アミノ酸の形にピッタリ合うように設計されているので、L型しか使えません。
    D型は形が違うので合わず、反応が起こりません。

    分子モデルで考えると…

    分子模型を使って考えるとわかりやすいのですが、分子はまるで立体パズルのようなもので、部品の角度や向きがとても重要です。
    L型とD型は「鏡像」なので、お互いには同じパズルピースとしては機能しないというイメージがしやすいです。

    旋光性の仕組み

    旋光性とは、ある特定の物質が光を通したときに、その光の偏光面(光が振動する方向)を回転させる性質のことを指します。
    偏光面とは、光の波が特定の方向に振動している状態のことです。
    旋光性を持つ物質を光学活性を持つ物質といいます。

    光は通常、あらゆる方向に振動していますが、特定の装置(偏光板)を使うと、光を一つの方向に振動するようにできます。
    これを偏光と呼びます。
    光学活性を持つ物質(たとえば、アミノ酸や糖などのキラル分子)を通すと、その偏光した光の振動面が回転します。
    この回転する性質を「旋光性」と呼びます。
    旋光性を持つ物質は、偏光面を(時計回り)または(反時計回り)に回転させることができます。

    右旋性と左旋性

    右旋性(D型): 光の偏光面を右(時計回り)に回転させる物質。
    このような物質はデキストロ回転性(dextrorotatory)とも呼ばれ、光学的には「D」と表記されます。

    左旋性(L型): 光の偏光面を左(反時計回り)に回転させる物質。
    このような物質はレボ回転性(levorotatory)とも呼ばれ、光学的には「L」と表記されます。

    旋光性の例

    グルコース
    グルコース(ブドウ糖)は旋光性を持っていて、一般的に摂取するD-グルコースは右旋性です。
    つまり、偏光した光を通すと右に回転させます。

    アミノ酸
    多くのアミノ酸も旋光性を持っていて、ほとんどはL型で、左旋性(偏光面を左に回転させる性質)を持っています。

    旋光性の測定

    旋光性は、旋光計という装置で測定されます。
    この装置を使って、どの方向にどれだけ偏光面が回転したかを数値化することができます。
    物質ごとに回転角度は異なり、それによってその物質の旋光性がわかります。

    旋光性が重要な理由

    旋光性は、物質の分子構造や性質を知るうえで非常に重要です。
    特に医薬品や食品分野では、右旋性か左旋性かによって、同じ分子でも体内での働きが大きく異なることがあります。

    例えば、ある薬は片方の旋光性を持つ異性体だけが効果を発揮し、もう片方は効果がないか、副作用を引き起こすこともあります。

    DL型も存在?

    DL型というのは、あるアミノ酸がL型とD型の両方の形を混ぜ合わせた混合物です。
    化学的には「ラセミ体」とも呼ばれます。
    これは、L型とD型が50%ずつの割合で含まれている状態のことを指します。

    DL型の性質

    DL型は、L型とD型が等量含まれているため、全体としてはキラリティ(立体的な偏り)を持たないことになります。
    これは、L型とD型が互いに打ち消し合うためです。

    例えば、光学的に回転する性質を持つ分子(光を回転させる能力がある)では、L型はある方向に光を回転させ、D型は反対方向に光を回転させます。
    DL型はその両方が混ざっているため、光学活性が打ち消されて光を回転させない状態になります。

    DL型はどこで使われる?

    食品やサプリメント:食品添加物やサプリメントのアミノ酸の中には、コストの理由や効率の観点からDL型が使われることがあります。
    ただし、体内ではL型が主に利用されるため、DL型のうちD型はほとんど役立たないことがあります。

    医薬品:ある薬物はL型やD型のどちらかが生理活性を持つ場合がありますが、時にはDL型で製造されることもあります。

    例:DL-アラニン

    例えば、アラニンというアミノ酸はL型とD型が存在します。
    食品やサプリメントではDL-アラニンという名前で両方の型が混ざったものが使われることがあります。
    体は主にL型を使うため、DL型が入っていても体内ではL型だけが利用されます。

    グリシン

    グリシンは他のアミノ酸とは少し違います。
    グリシンはアミノ酸の一種ですが、鏡像異性体を持たない特別なアミノ酸です。

    グリシンの特徴
    グリシンは、他のアミノ酸と同じく基本的な構造を持っていて、次の部分で構成されています。
    アミノ基(-NH₂)
    カルボキシル基(-COOH)
    側鎖(Rグループ)

    ただし、グリシンの側鎖は非常にシンプルで、水素原子(-H)しかありません。
    このため、グリシンの中央にあるα炭素原子に結びついているのは、同じ水素原子が2つという形になります。

    鏡像異性体でない理由

    他のアミノ酸では、中央のα炭素に異なる4つのグループが結合しているため、キラリティが生じます。
    これは、炭素原子に4つの異なる原子や基が結びつくと、左右対称でない構造になるからです。
    しかし、グリシンの場合は、α炭素に結びついているものが2つとも水素原子(同じもの)なので、分子全体が左右対称になります。
    このため、グリシンは鏡像異性体でない唯一のアミノ酸です。

      グリシンの立体構造の違い

      他のアミノ酸では、L型やD型のように光学異性体が存在しますが、グリシンにはそのような区別がありません。
      どちらの手でも同じ形を持つように、グリシンは左右対称であり、回転させても同じ形です。